伝統あるPMCの自然でリアルなサウンドは、独自のATL(Advanced Transmission Line)技術を用いて作り出されます。
このページでは、ATL技術に関して説明します。
トランスミッション・ラインは、ドライバーの背面から発生するサウンドから不要な高域や中域を減衰させ、必要な低域を正面にある穴から同位相で出力させる役割を果たしますことで低域のパフォーマンスを向上させます。その効果は主となる周波数を中心に約2オクターブの広帯域にわたって効果を発揮します。さらにドライブ・ユニットの動きの制御、歪みの大幅な低減、最大出力レベルを引き上げに貢献します。共振周波数はトランスミッション・ラインの長さによって変化し、周波数の1/4はトランスミッション・ラインの長さによって決定されます。
トランスミッション・ラインを使用したスピーカーの設計では、多くの複雑なパラメーター変化のバランスを必要があります。ドライブ・ユニットの性能、トランスミッション・ラインの長さ、エンクロージャーの面積、テーパーとプロファイル、フォームの厚さや仕様とその配置…など、理想的な結果を得るためには、多くのパラメーターを考慮し、最適化しなければなりません。膨大なコストと難易度の高い技術的な課題を乗り越え、PMCはトランスミッション・ラインを使用したスピーカーの開発に成功した数少ない企業の1つとなりました。
トランスミッション・ラインを使用したスピーカーは1930年代から存在し、1960年代にはベイリーによって初めて世の中に普及しました。しかし当時の物は巨大で、共振の制御や、ドライブ・ユニットとトランスミッション・ラインの的確な位置関係や相性の悪さ…など、数多くの問題を抱えていました。
PMCは、トランスミッション・ライン・スピーカーのポテンシャルを最大限に引き出すため、膨大な時間と資金を費やしてきました。最初の大きな変更は、キャビネットの内張りに使用する吸収フォームの仕様変更でした。その結果、中高域の吸収率、低域の共振の抑制、そして吸収フォームを通過する際の音の速度を効果的に減速させることでキャビネット内を音が移動する距離を変化させることで、全てのバランスを整えることができました。また、キャビネット内に共振吸収チャンバーを設置することで特定の不要な共振周波数をコントロールし、歪みを減らすことにより、よりリニアなサウンドに近づけることができました。
その後にも、トランスミッション・ライン末端から流れる空気を分割するLaminair™(ラミナー・フロー / 層流)を開発しました。流れを複数に分割することで滑らかにし、気流内の乱れを大幅に減少させる働きをします。その結果、不要な 「シュッ 」というノイズを取り除き、よりクリーンでラウドな低音を再生できるようになりました。
スピーカー製品 / ラインナップごとに、ドライブ・ユニットの設計にかなりの研究と開発の努力が費やされています。トランスミッション・ラインの仕様はドライブ・ユニットの動作に影響し、その逆もまた然りであるため、最高の性能を引き出すためにはキャビネットとドライブ・ユニットを連動して開発することが不可欠です。
また、トランスミッション・ライン・キャビネットは、一般的な密閉型スピーカーやポート型スピーカーで使用されるドライブ・ユニットとセットでも優れた性能を発揮します。そのため、PMC製品に使用されるドライブ・ユニットはすべてPMCによってカスタム設計され、その多くは完全に社内で製造されています。
ボディは小さく、低域はディープに
トランスミッション・ラインを通る空気は、ドライブユニットのコーン背面にも物理的に影響します。これが、トランスミッション・ラインによってコーンの動きが制御される仕組みです。これによりコーンの可動質量が大幅に増加し、ドライブ・ユニットの共振周波数が少なくなります。その結果、同じドライブ・ユニットを搭載した密閉型またはポート型キャビネットよりもヘッドルームが広く、歪みの少ない、かなり深い低音を再生できるようになります。
トランスミッション・ライン内に設置されたフォームのダンピング(減衰)効果は非常に優秀で、キャビネットに放射される不要な中高域を吸収します。その結果、スピーカーから生み出される低音の質は驚くほど無駄がなく正確で、シンプルな構造のポート型スピーカーと比べて優れた時間領域特性を誇ります。
ボリューム設定に影響されない低域のレスポンス
ポート付きスピーカーでは低域のレスポンスを向上させるためにヘルムホルツ共振を利用しますが、それだと相当量のエネルギーがシステムに入力されないとポートが効率的かつアクティブにならないため、弱い信号レベルでは低域レスポンスが低下します。
トランスミッション・ラインでは信号レベルによって低域のレスポンスが変化することはありません。そのため、小音量でのモニタリングから、大音量のリファレンス・レベルでのモニタリングまで、安定した周波数特性での再生を維持します。
共振吸収チャンバーは特定の周波数に合わせて正確に調整することができ、ATLの出力から不要な周波数を効果的に除去することができます。
ATLスピーカー・キャビネット内の不要な共振や後方放射を吸収するためハイスペックな吸音フォームが使用しています。それでもドライな低域を鳴らすためには、過剰な量のフォームを使用して不要な帯域を完全に減衰させる必要がある特定の共振周波数が存在します。この場合、キャビネット内の共振吸収チャンバーを利用して特定の周波数をコントロールします。
ATLスピーカーキャビネットでは、不要な共振や背面の放射音を吸収するため、厳選された吸音フォームを使用しています。しかし、場合によっては、特定の共振周波数を完全に減衰させるために過剰な量のフォームが必要となり、その結果、スピーカーの低域レスポンスが過度にドライになってしまうことがあります。
このようなケースでは、キャビネット内部に共振吸収チャンバーを設けることで、制御したい特定の周波数を狙って対処できます。これらのチャンバーは特定の周波数に正確に同調させることができ、ATLからの不要な周波数出力を効果的に除去します。これにより、スピーカーから完全にクリアで色付けのないサウンドが得られます。
PMCの Laminair™ エアロ・ダイナミック・ベントは、F1からル・マンまで使用されている高性能エンジニアリングの「ATLエアロダイナミック原理」を応用しています。トランスミッション・ラインの出口で空気の流れをスムーズにすることで、オーディオパフォーマンスを高めます。
ATLデザインは空気の流れを早く、高圧にします。ATL通気口で発生する乱流を防ぐことで抵抗を減らし、流れの効率を高めます。空気ノイズを排除し、タイミングの合った最大限のダイナミックレンジでクリアな低音を届けます。ATLで余計なノイズや周波数が取り除かれた後に残るのは、純粋な「音楽」です。ATLとLaminair™の組み合わせで、オーディオの品質を更なる高みへと導きます。
キャビネットを形成するにあたり、構造と精度が最も重要視される事項です。
キャビネットとATL™(アドバンスト・トランスミッション・ライン)には、精密機械加工された厚さは40mmのHDF材が使用されています。
また、安定性と製品寿命を保証する化粧板が内側と外側の両方に施されています。